治療の特色

治療抵抗性統合失調症について

統合失調症は、脳機能障害の一つで、考えや感情がまとまりにくい状態となり、「頭の中に私を非難する声が響いてくる」「自分の考えていることが他の人に筒抜けになっている」と怯えて家から出られなくなるなど、今までは何気なくできていたことができなくなってしまう病気です。治療薬をきちんと用いれば、多くの方が以前とあまり変わりない生活が送れるようになります。しかし、治療薬をきちんと用いても、病気の症状により長期にわたる入院を余儀なくされたり、家に引きこもって外に出られなかったりして生活に支障をきたしている場合があります。あるいは錐体外路症状という副作用のために治療薬をきちんと用いることができない場合があります。そのような状態を「治療抵抗性統合失調症」と呼びます。

クロザピンについて

クロザピンは、世界中で広く使用されており、治療抵抗性統合失調症に対して高い治療効果があると評価されています。また、遅発性錐体外路症状という、抗精神病薬の治療中に出現しやすい副作用を起こしにくいという特長も有しています。

効果もあり、利点の多い薬ですが、「無顆粒球症」等の重い副作用が起きる可能性があります。顆粒球というのは、外からの異物、細菌、ウイルスなどを殺す白血球の一種です。かなり減った状態が続くと容易に感染しやすくなります。1975年、フィンランドにおいて、クロザピン服用中の16名の患者さんに無顆粒球症が起き、8名が亡くなったという報告があり、世界各国で販売・治験中止となり、日本でも承認申請が取り下げられていました。この他に、体重増加、糖尿病、高脂血症といった代謝異常も、他の薬に比べると多いという報告があり、決して万能な薬ではありません。

しかし、そのような重い副作用があり、一度は販売中止になったにもかかわらず、現在世界の多くの国々でこの薬が使用されているのは、今までの治療では良くならなかった治療抵抗性統合失調症に対して、他の治療薬と比べて明らかに効果が認められ、それによって多くの患者さんの生活に希望をもたらしたという実績があるからです。

クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)について

日本でクロザピンを安全に使うために、海外でも運用されているシステムが導入されています。クロザピンを使用するにあたって、病院、医師、薬剤師、コーディネーター、患者さんは、CPMSというシステムに登録を行います。

これは、それぞれの患者さんに対して、適切な頻度で検査が行われ、安全に使用されているかを絶えず確認することを一つの目的としています。万が一、無顆粒球症を起こした場合にも、早期発見して適切な治療を受けることで、後遺症なく回復できることを目指すものです。

クロザピンの使用経験から

当院では、2009年12月からクロザピンが投与できる登録施設となり、以来2019年6月現在までに、321名の登録患者さんにクロザピンを使用してきました。18名の患者さんは、白血球が使用できる基準値を下回り、投与を中止しました。しかし、CPMSに沿った検査とフォローによって、後遺症なく元の治療に戻っています。その他にも副作用や患者さんの希望もあり、中止例は100名を超えますが、継続している患者さんでは、今までの薬剤では得られなかったような効果が確認できています。幻覚や妄想を改善する効果や、体が震える、舌がもつれるといった他の薬で困っていた副作用が少ない点も確認できていますが、この10年間の使用経験で最も強い効果を感じたのは、本人が苦しんでいること、望んでいることを、こちらが理解できるようになった点です。患者さんが感じていた、「伝えたいことを伝えられない」ことからくる苛立ちや不安、家族の方や職員が感じていた「何を考えているか分かってあげられない」というもどかしさがなくなることで、幻聴や妄想が多少残っていても、生活できるようになります。海外には統合失調症の人の2割以上の人がクロザピンを使う国もあります。もっと一般的に使用が広まるべき薬だと思っています。

patients with treatment-resistant schizophrenia: 4-year observational study
治療抵抗性統合失調症長期滞在患者に対するクロザピンの有効性:4年間の観察研究

お問い合わせ

クロザピンについて詳しい説明を受けたいという患者さんやご家族の方は、まず当院の地域医療連携室にご相談ください。

またノバルティスファーマ社による専用サイトに詳細な説明があります。

社会医療法人如月会 地域医療連携室

<病院代表> 電話:0985-28-2801

相談受付時間 月~金 8:30~17:00

ECT(電気けいれん療法)について

ECTは、頭部を電気で刺激することで人為的にけいれん発作を作り出し、精神疾患によって障害された脳機能を回復させる治療法で、長年実施される中で改良を積み重ね、現在では全身麻酔を併用して行う方法が推奨されています。主に治療対象となる疾患は、大うつ病、統合失調症、双極性障害などで、疾患の種類と状態により治療の必要性を総合的に判断します。ECTは繰り返し受けることで効果が出る治療です。一般的に週に2回の頻度で治療を行い、6週間かけて12回程度実施しますが、症状の改善レベルや副作用の程度などにより、治療回数が増減することがあります。

ECTを施行するにあたり、安全に行うことができるか判断するために、事前に採血や頭部CT、歯科受診など様々な検査を行います。主治医が検査結果を解釈し、必要がある場合には専門医療機関を受診して頂いたり、ECT自体を実施しない場合もあります。実施可能と判断されたら、治療の準備のため開始当日までに入院をします。治療はECT専用の部屋で行われます。点滴の管から麻酔薬と筋弛緩薬を投与して全身麻酔下で治療を行います。お薬を投与した後は10分程度の深い眠りに入り、その間に治療が終了します。ECTおよび併用される麻酔には副作用や合併症があり、一過性の頭痛や数日程度の記銘力低下、せん妄状態が認められる方もいます。

ECT施行後、効果判定のため心理検査で症状を数値化したものを治療前後で比較し、評価していきます。症状が改善した場合には早期に終了することもあり、再発がないかを外来で観察します。再発の兆候がある場合には、通常のECTと内容は同じですが、治療スケジュールの異なる定期的かつ継続的に行われる維持ECTの適応になる場合があります。